『がん診療情報シリーズ 1』
海南病院は、地域の基幹病院として沢山の役割を担っておりますが、その中で、尾張西部のがん診療連携拠点病院として国から指定を受けております。拠点病院として、がん診療体制の充実は勿論ですが、がんに関する相談支援センターを設置しておりますし、また、緩和ケアチームや緩和ケア病棟(ポスピス)も整備しております。日本における死亡原因第1位のがんをあらゆる角度より対策を講じるため、今年4月に『がん対策基本法』が施行されたのをうけ、国もがん対策を強力に推し進めております。その意味からも、しばらくシリーズで、がん情報をこのメディカルサロンでも取り上げていきたいと考えております。

 まず、今回はがん予防の観点からお話をしたいと思います。
 がんも、気をつければある程度予防することができる病気です。がんの原因やハイリスク集団が明らかにされ、具体的な予防法が開発され、がん予防対策が効果的に実施されれば、がんの発生率とそれに続く死亡率は確実に下がるでしょう。これまでの研究から、がんの原因の多くはたばこや飲酒、食事等の日常の生活習慣に係わるものだと分かっています。1996年にハーバード大学のがん予防センターから発表されたアメリカ人のがん死亡の原因では、喫煙(30%)、食事(30%)、運動不足(5%)、飲酒(3%)の合計で全体の68%になりました。これらのがん死亡は、生活習慣の見直しによって予防できたものと考えられます。
 WHO(世界保健機構)による食事関連要因に関する評価に、LARC(国際がん研究機構)によるたばこに関する評価の結果を加えた概要は以下のとおりです。喫煙は、肺がんだけではなく、他の多くの部位のがん(口腔(こうくう)、咽頭(いんとう)、喉頭(こうとう)、食道、胃、膵臓(すいぞう)、肝臓、腎臓、尿路、膀胱(ぼうこう)、子宮頸部(しきゅうけいぶ)、骨髄性白血病)のリスクを確実に高くします。また、他人のたばこの煙(環境たばこ煙、あるいは受動喫煙(じゅどうきつえん))も、肺がんのリスクを高くするのは確実とされています。喫煙以外の要因とがんとの関連で確実だといえるのは、運動不足(結腸)、肥満(食道(腺がん)、結腸、直腸、乳房(閉経後)、子宮体部、腎臓)、飲酒(口腔、咽頭、喉頭、食道、肝臓、乳房)、アフラトキシン(カビ毒の一種で、保存状態の悪いトウモロコシやナッツ等の穀類に混入していることがある)(肝臓)、中国式塩蔵魚(中国の一部地域で食べられている特殊な処理をして作る魚の塩漬け)(鼻咽頭)、また、可能性が高いと思われる関連は、野菜や果物(口腔、食道、胃、結腸、直腸)、運動(乳房)、貯蔵肉(結腸、直腸)、塩蔵品および食塩(胃)、熱い飲食物(口腔、咽頭、食道)等であると報告されています。
 ある種のウイルスや細菌の持続感染も、がんのリスクを高くすることが分かっています。B型やC型肝炎ウイルスは肝臓がん、ヒト・パピローマ・ウイルスは子宮頸がん、ヒトT細胞性白血病リンパ種ウイルスは成人T細胞性白血病や悪性リンパ種の原因ウイルスであることが分かっています。また、ヘリコバクター・ピロリ菌の持続感染は、胃がんのリスクを確実に高くするとLARCによって評価されています。ただし、これらのウイルスや細菌の持続感染者の全てががんになるわけではありません。なぜ、ある人はがんになり、ある人はならないのか、遺伝的な要因を含めてその違いを知り、感染者のがんリスクを軽減するための方策を見出す研究が重要です。
 WHOの食事に関する基本方針(8項目)から日本にあわせた項目を拾い上げると、次の7項目となります。1.成人期での体重を維持する。2.定期的な運動を継続する。3.飲酒はしない。4.食塩の摂取は適度にする。5.野菜や果物を少なくとも1日に400g取る。6.ソーセージやサラミ等の保存肉の摂取は適度にする。7.飲食物を熱い状態で取らない。』

 禁煙と上記の食習慣改善が、現段階では最も実行する価値のあるがん予防といえるのではないでしょうか。(なお、データに関しては、国立がんセンター:がん情報サービスから引用させていただきました。