脳を守る『脳ドック』
 私の専門分野が脳神経科学および臨床でありますので、今回は、海南病院としても力を注いでおります脳ドックのお話しをさせていただこうかと思います。

 体の健康診断を人間ドックと言いますが、そもそもドックとは、船舶を検査のために入れることをドックということから使われ、脳の健康診断なので、首から上を調べることを脳ドックと名付け、1988年、もう20年前になりますが、北海道の新さっぽろ脳神経学科病院で最初に行われました。英語では、brain check up となりますが、外国では行われておらず、日本の脳神経学科医が中心となって推進してきた歴史があります。これは、発症してからでは治りの悪い脳卒中を沢山目の当たりにしてきて、なんとか脳の病気も予防ができないものだろうか・・・という強い想いから継続、進化してきました。1992年には、日本脳ドック学会も設立され、現在まで16回にわたり、色々な研究や検討がなされてきました。2003年9月には、脳ドックのガイドラインの改定版も出され、より質の高いものとなり、当院の脳ドックもこのガイドラインに準拠しております。

 脳ドックの検査の主体は、なんといってもMRIという磁気を使った撮影装置であり、この機械により、脳の精密な構造、脳血管の評価、頸部血管の評価が可能となります。レントゲンを使用するCTと比較して、被爆の心配がいらないことや、造影剤なしで血管が評価できるという画期的装置であります。ただ、検査中かなりの大きな騒音が発生することが検査を受けられる方の唯一の気になることでしょうか。2006年10月からは、2台目のMRI装置を最新機器に更新いたしまして、さらに、2007年よりは、脳血管の評価をする方法(MRアンギオといいますが)に、詳細なコンピューター処理を追加し、三次元画像にて立体回転画像での評価が可能となり、大変充実いたしました。

 脳ドックによってかなりの脳の病気が未然に発見されますが、年齢的には50歳以上の方に多くみられるようになります。発見される異常所見の頻度としては、脳の小さな梗塞である(ラクナ梗塞といいます)無症候性脳梗塞が最も多く、約18%の方にみられます。無症候性脳血管狭窄は約5%、くも膜下出血の原因となる未破裂動脈瘤は約2〜3%、無症候性脳腫瘍は約1%、その他の何らかの異常が約2%にみられます。これらの異常所見がみられた場合は、担当の脳神経学科医より詳しい説明と生活指導、あるいは精密検査のおすすめがなされますが、結果として、薬物治療や脳外科手術を受けられる方もみえます。ただ、脳ドックを受けられる方は何も症状のない場合がほとんどなので、治療に関しては、慎重に考え何度も検討することが必要です。場合によっては、他の医療機関での意見(セカンドオピニオン)も受けられることもよろしいかと思います。脳ドックで正常と判定された場合は安心していただき(勿論、何事も100%というわけではありませんが)、受診間隔についても、人間ドックのように毎年ではなく、2〜3年に一度くらいの頻度でよろしいかと思います。紙面の都合で脳ドックの概略しかお話しできませんでしたが、次回は、脳ドックの中でもくも膜下出血という怖い病気に関する脳動脈瘤を取り上げてみたいと考えます。

 海南病院は、いつでも健康に関して相談できる身近な存在でありたいと考えております。健康管理センターでご相談を受け付けております。